友だちだから、と安くしていました。喜んでもらえていると思っていました。 ところが、来てくれる回数のほうが、少しずつ減っていったのです——。 この記事では、知人・友人の料金をどう扱うかを、関係を壊さずに整える方法としてまとめます。
- 値引きは親切に見えて、相手を来づらくさせることがある
- 断る力ではなく、料金表を先に見せることで頼まれる場面を消す
- お友だち価格をやめる目的は売上ではなく、その人と長く続けるため
- 友人・知人にだけ、なんとなく安くしている
- いくらもらえばいいか、毎回その場で迷う
- 「お金いいよ」と言ったものの、内心もやもやしている
- 安くしている人ほど、来る間隔が空いてきた
- いまさら普通の料金にできず、そのまま何年も経っている
値引きが、相手を遠ざけることがあります
意外に思われるかもしれませんが、安くするほど来にくくなるということが起こります。
理由はひとつです。借りが積み上がるからです。
一度なら「ありがとう」で済みます。二度目も、まあ大丈夫。 でも三度、四度と続くと、来るたびに借りが増えていく感覚になります。 相手は悪くありません。むしろ、気にする方ほどこうなります。
つまり、値引きはあなたの善意が、相手の負担に変わってしまう構造を作ります。 喜ばせようとしたことが、結果的に距離をつくる。ここが、この問題のややこしいところです。
相手を責めないでください
この話をすると「図々しい人にどう対応するか」という文脈で読まれがちですが、 そういう記事ではありません。
実際には、値切ってくる人はそれほど多くありません。 多いのは、こちらが勝手に安くして、相手が気を遣っている状態です。 頼まれてもいないのに割引をして、そのあと自分でもやもやしている。 ——心当たりがあれば、この記事は役に立ちます。
なぜ「いいよ、いいよ」と言ってしまうのか
お金を受け取る瞬間が、いちばん気まずいからです。
友人相手だと、施術中はふつうに話せていたのに、 会計の一瞬だけ立場が変わります。友人から、お店の人になる。 その切り替えが気まずくて、「いいよ、いいよ」と流してしまう。
これは性格の問題ではありません。役割が切り替わる瞬間の摩擦です。 だから、性格を直そうとしても解決しません。 切り替わる瞬間そのものを、なくします。
やり方は、3つあります
| やり方 | 向いている場合 | あとで困るところ |
|---|---|---|
| ① これからも お友だち価格 |
相手が本当に数人で、今後も増える見込みがない | 相手が増えると破綻する。他のお客様に知られたときに説明できない |
| ② 料金表を作って 全員に同じものを |
ほとんどの場合はこれ。迷ったらこちら | 切り替えるときに、一度だけ気まずい |
| ③ お友だちの日を つくる |
割引ではなく、時間帯や枠で調整したい | その日に来られない人との差が生まれる |
①がいちばん危ういのは、相手が増えたときに止められないことです。 友人の友人、そのまた紹介——と広がったとき、どこまでが「お友だち」なのか線が引けなくなります。
そして、価格に二重の基準があると、他のお客様に知られたときに説明ができません。 隠しごとをしている状態は、こちら側の気持ちにもじわじわ効いてきます。
料金表が、断る役をやってくれます
②を選ぶ場合、やることはひとつです。紙を1枚つくる。それだけです。
メニュー名と料金を書いた紙を用意して、誰にでも同じものを見せる。 友人が来たときも、初めての方と同じように渡します。
これだけで、あなたが値段を言う場面が消えます。 値段を言うのは、あなたではなく紙です。
デザインに凝る必要はありません。A4に印刷したもので十分です。 大事なのは、その場で作ったものに見えないこと。 あらかじめ用意してあるものだと伝われば、 「この人のために決めた金額」ではなく「もともとそうなっている」と受け取られます。
その場で決める
- 相手を見て、いくらにするか毎回迷う
- 言い出しづらくて流してしまう
- 人によって違う金額になる
- あとから思い出してもやもやする
先に見せる
- 渡すだけなので、迷う時間がない
- 値段を言うのは紙の役目
- 誰にでも同じ条件になる
- 会計が事務作業になる
切り替えるときの一言
すでに安くしている相手に、どう伝えるか。ここが最大の山場です。
違いは目的を伝えているかどうかです。
上は自分の事情の説明で、相手は「負担をかけていた」と感じます。 下は「ずっと来てほしいから」という理由が先に来ています。 値上げの話ではなく、関係を続けるための話として伝わります。
実際、それが本当の目的のはずです。 安いままだと相手が来づらくなる。だから普通の料金にする。 相手のための調整として伝えて構いません。
それでも、何かしてあげたい場合
長い付き合いの方に、何もしないのは寂しい——という気持ちは自然です。 その場合、値引き以外の形を選んでください。
時間で融通する
営業時間外や早朝など、通常は取れない枠で受ける。値段は同じでも、価値は伝わります。
ひと手間を足す
ハンドケアを少し長めに、など。金額を下げずに、時間の使い方で応える形です。
回数で返す
何回か通ってくださった節目にお礼をする。全員に同じ基準なら、公平さが保てます。
「あの人だけ」が他のお客様に伝わると、値引きより厄介な問題になります。 残すなら、他の方に説明できる形にしてください。
いつ切り替えるか
やると決めたあと、次に迷うのがタイミングです。
おすすめは「次に来られたとき」です。 わざわざ連絡して伝えると、話が重くなります。 料金表を用意しておいて、いらしたときに渡せば、それで済みます。
連絡してから来店までの数日間、相手に考える時間を与えてしまうのも避けたいところです。 会って渡せば、その場で話が終わります。
店全体の料金改定と、その人への切り替えが重なると、 「自分だけ二重に上がった」ように感じられます。どちらかを先に、間を空けて。
順番としては、先に友人料金を通常に戻し、落ち着いてから店全体の改定のほうが 説明しやすいはずです。逆にすると、改定の直後にもう一段上がることになります。
また、施術の直前に渡すのも避けてください。 受け取ってすぐ座ることになり、断る余地がありません。 会計のとき、あるいは帰りぎわに「次から」として渡すのが、いちばん角が立ちません。
やってはいけない3つ
その場の空気で決める
毎回違う金額になります。決めていないことが、いちばんの負担です。
相手のせいにして話す
安くしたのは自分の判断です。「甘えられて」という語り口は、関係を確実に傷つけます。
黙って値段だけ戻す
会計で気づかれると、いちばん気まずい形になります。先に伝えてください。
相手がどう思うかは、分かりません
正直に書いておきます。
伝えたあと、相手が快く受け入れてくれるとは限りません。 少し距離ができることもあれば、来なくなることもあります。 「関係が良くなります」とは言えません。
ただ、安いままにしておいても、間隔は開いていきます。 どちらにも痛みがあるなら、こちらが決めて動けるほうを選ぶ、というだけの話です。
そして、伝えたあとも変わらず来てくださる方がいます。 その人は、値段で来ていたのではなかった——それが分かります。
もうひとつ、やってみると分かることがあります。 値引きをやめると、その人の前で気を張らなくてよくなります。 安くしている相手には、無意識に「そのぶん丁寧に」と背負ってしまうものです。 同じ料金にすると、その荷物が下ります。楽になるのは、実はこちらのほうかもしれません。
よくある質問
料金表のつくり方テンプレート
全員に同じものを見せるための1枚。メニュー名の書き方、 知人に渡すときの一言、値引きを頼まれたときの返し方まで。金額欄は空欄です。
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※記載の内容は一般的な情報をもとにまとめたものです。適正な料金や、知人への対応は
お店の状況やお付き合いの深さによって異なります。文例はそのまま使えるものではなく、
ご自身の言葉に置き換えてお使いください。無償・低額で施術を行う場合の取り扱いについては、
ご状況により判断が異なりますので、必要に応じて専門家にご確認ください。
