はじめた頃の値段のまま、気がつけば何年も過ぎていた。上げたい。 でも、通ってくださっている方が離れてしまったらどうしよう——。 この記事では、値上げを一人ずつ説明せずに済ませるための、伝え方と順番をまとめます。
- 値上げが言えないのは、一人ずつ説明しようとしているから
- 告知日を決めて料金表を先に出せば、説明する場面そのものが消える
- 上げ幅より、伝える順番のほうが結果を左右する
- 開業したときの値段のまま、何年も変えていない
- 予約は埋まっているのに、手元に残る感覚がない
- 上げたいけれど、常連さんの顔が浮かんで言い出せない
- 「新しい方から上げればいい」と思いつつ、そのままになっている
- 近隣の相場は分かるが、自分の店に当てはめられない
値上げが怖い、本当の理由
値上げに踏み切れない理由を突きつめていくと、多くの場合ここに行き着きます。
技術でも、居心地でも、話しやすさでもなく、値段で選ばれている—— そう思っているうちは、上げれば離れると考えるのが当然です。 だから値上げの話は、金額の計算ではなく自分の仕事をどう見ているかの話になります。
ただ、ここで「自信を持ちましょう」と言われても、持てるものではありません。 自信は結果からしか生まれないからです。だから、順番を変えます。 自信を持ってから上げるのではなく、上げる手順を整えてから、結果を待つのです。
上げ方は、3つあります
やり方は大きく3通りです。どれが正解ということではなく、 あとで自分が困らないものを選んでください。
| やり方 | ラクなところ | あとで困るところ |
|---|---|---|
| ① 新規のお客様 から上げる |
常連さんに何も言わなくていい。当面の摩擦がない | 長く通う方ほど安いまま残る。差が広がるほど、あとで説明が苦しくなる |
| ② 日を決めて 全員いっしょに |
説明が一度で済む。全員に同じ話ができる | 告知の準備がいる。当日までの期間が落ち着かない |
| ③ 値段は変えず 内容を見直す |
値上げの告知をしなくていい | 提供が減れば、実質的な値上げとして伝わることがある |
①は、その場はいちばんラクです。ただ、時間が経つほど古いお客様と新しいお客様の差が開きます。 差が開いてから揃えようとすると、そのときの値上げ幅が大きくなります。 今日の一時しのぎが、来年の重い相談になる形です。
③は、材料や時間の内訳を見直す機会としては有効です。 ただ、施術内容や所要時間を減らすと、お客様には値上げと同じように受け取られることがあります。 「気づかれないように」と考えているなら、それは避けたほうが安全です。
一人ずつ言うから、言えなくなる
②を選んだ方に、いちばんお伝えしたいことがここです。
値上げが言えないのは、お客様の顔を思い浮かべながら、一人ずつ説明する場面を想像しているからです。 Aさんにどう言おう、Bさんは何と言うだろう——そう考えはじめると、永遠に決まりません。
ところが、日付を決めて、料金表を先に出しておくと、この場面がまるごと消えます。 お客様は貼り紙やお知らせで先に知ることになり、あなたが一人ずつ切り出す必要がなくなります。
一人ずつ言う
- 切り出すタイミングを毎回さがす
- 相手によって言い方が変わる
- 言えなかった人が残り、不公平になる
- 会計のたびに気が重い
先に出しておく
- 告知した時点で、全員に同じ情報が届く
- 聞かれたときだけ答えればいい
- 誰にも同じ条件になる
- 当日を過ぎれば、話題にならなくなる
告知の順番
手順そのものは、とても地味です。
新しい料金と、切り替える日を決める
先に日付を決めてください。決まっていないと、いつまでも準備が終わりません。 来店サイクルが3〜4週間の業態なので、ほとんどの方が一度は来店される期間を 告知期間として確保できると安心です。
料金表を1枚つくる
メニュー名と金額、切り替え日を書いた紙を用意します。 口頭より、目に見える形があるほうが伝わります。 施術ブースの見える場所に貼り、同じものをSNSやLINEでも見られるようにしておきます。
来店された方から順に、目に入るようにする
わざわざ説明しなくて構いません。貼ってあれば、たいていの方は気づきます。 気づいて何か言われたときだけ、短く答えてください。
切り替え日を過ぎたら、話題にしない
こちらから「値上げしましたが大丈夫ですか」と確認しないでください。 終わったことを蒸し返すと、かえって意識させます。普段どおりに戻るのが最善です。
告知期間の長さに決まりはありません。短すぎると急な印象になり、 長すぎると気まずい期間が延びます。ほぼ全員が一度は来店される長さを目安に、 ご自身の予約状況から逆算して決めてください。
お知らせの書き方
文面で迷う方が多いところです。長く書くほど言い訳がましくなるので、短くしてください。
違いは謝っているかどうかです。 上の文は最初から最後まで詫びていて、読んだ側は「悪いことをされた」と受け取ります。 下は事実と姿勢を伝えているだけです。
値上げは、悪いことではありません。続けるための調整です。 そう思っていない文面は、そのまま相手に伝わります。
聞かれたときの返し方
長く説明しないほうが伝わります。一往復で終えるくらいがちょうどいい距離感です。
回数券・前売りがある場合は、先に決めておく
ここは見落とされやすいところです。
回数券やチケット、前売りの施術券を発行している場合、 すでにお渡ししている分をどう扱うかを、告知の前に決めておいてください。 切り替え日を過ぎてから聞かれると、その場で判断することになり、人によって答えが変わってしまいます。
- 既発行分は、有効期限までそのまま使えることにするか
- 差額をいただくのか、いただかないのか
- 有効期限そのものを、どう案内するか
どれを選んでも構いませんが、決めてから告知するという順番だけは守ってください。 料金表に一行添えておくと、聞かれる回数が減ります。
やってはいけない3つ
こっそり上げる
告知せずに変えると、会計で気づかれます。気づいた方は言い出しにくく、黙って離れます。
常連さんだけ据え置きを公言する
親切のつもりでも、他の方に知られたときに不公平になります。特別扱いは表に出さない。
お知らせに愚痴を書く
苦しさを並べると、同情ではなく不安を与えます。事実と姿勢だけにとどめてください。
離れる方は、いらっしゃいます
最後に、正直なことを書いておきます。
値上げをすれば、来られなくなる方は出ます。 「値上げしても誰も減らない」と書いてある記事もありますが、そんなことはありません。
ただ、離れた方が悪いわけでも、あなたが間違えたわけでもありません。 予算は人それぞれで、そのときの状況によっても変わります。 離れた方を「わかってくれなかった人」と思わないでください。 何年か後に、また戻ってこられることもあります。
そして、残ってくださる方がいます。その方たちは、値段で選んでいたのではなかった—— それが分かるのは、上げてみたあとです。
よくある質問
値上げのお知らせ文例と、告知タイムライン
いつ決めて、いつ貼って、聞かれたら何と答えるか。 貼り紙・LINE・SNSの文例と、回数券がある場合の確認事項までまとめたA4・1枚です。
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※記載の内容は一般的な情報をもとにまとめたものです。適正な価格や上げ幅、告知期間は
地域・客層・施術内容によって異なります。文例はそのまま使えるものではなく、
お店の雰囲気にあわせて調整してください。回数券・前売り券をお持ちのお客様への対応、
税務上の取り扱いについては、ご状況により判断が異なりますので、必要に応じて専門家にご確認ください。
