ひとりで始めたのだから、ひとりで解決しなければ—— そう思い込んでしまう方は、とても多いと思います。でも、 ひとりで店をやることと、ひとりで抱えることは、別のことです。 トラブル編の最後に、困りごとの種類ごとの相談先と、 相談する前に整理しておくことをまとめます。
- ひとりで店をやることと、ひとりで抱えることは違う
- 困りごとには種類ごとに、決まった相談先があります
- 相談する前に3つ整理しておくと、時間もお金も少なく済みます
- 困っても、誰に聞けばいいのか分からない
- こんなことで相談したら、迷惑だろうと思ってしまう
- 同業には知られたくない。恥ずかしい
- お金を払って相談するほどのことではない気がする
- 調べているうちに、何日も過ぎてしまう
全部、わたしも通ってきた道です。 相談先を知らないだけで、抱えているように見えてしまいます。
ひとりネイルサロンでも、ひとりで抱える必要はありません
自宅サロンを始めた方の多くが、こう考えます。 「自分で決めたことだから、自分で何とかしなければ」。
その気持ちは、とても真っ当です。ただ、ここには誤解が一つ混じっています。
ひとりで抱える
- 誰にも言わず、自分で調べる
- 判断が合っているか、確かめる相手がいない
- 時間だけが過ぎて、状況が悪くなる
- 同じ失敗を、何度も繰り返す
ひとりで店をやる
- 最終的に決めるのは、自分
- 判断材料は、外から集めてよい
- 専門のことは、専門の人に聞く
- 決めるのが自分なら、それは十分ひとりです
店舗に勤めていたころは、判断に迷えば店長がいました。 ひとりになると、その人がいなくなったように感じます。 ですが実際は、店長という一人がいなくなっただけで、 相談先そのものが消えたわけではありません。
材料を集めるところまで自分でやる必要は、まったくありません。
困りごと別|自宅サロンの相談先マップ
いちばん実用的なのが、これです。 困りごとの種類ごとに、行き先はほぼ決まっています。
| 困りごと | 相談先の例 |
|---|---|
| 税金・確定申告 | 税務署の相談窓口、税理士、青色申告会 |
| お客様との金銭トラブル | 消費生活センター、法テラス、弁護士 |
| 衛生・消毒のやり方 | 保健所、器具や薬剤のメーカー |
| 爪や皮膚の異常 | 皮膚科(迷わずここへ) |
| 賃貸・管理規約 | 管理会社、大家さん |
| ご近所とのこと | 自治会、管理会社 |
| 技術・材料 | ディーラー、講習、以前の勤務先 |
| 集客・ホームページ | 専門の制作会社 |
| 危険を感じたとき | 警察(迷わず110番/#9110) |
この表を印刷して、施術台の引き出しに入れておいてください。 困ってから探すのではなく、困る前に持っておくものです。
ふたつだけ、太字にしています。 体のことと、身の危険を感じたとき。 この2つは、迷う時間そのものが損失になります。
相談できない、3つの理由とその外し方
「こんなことで、恥ずかしい」
いちばん多い理由です。特に技術の話は、同業に聞くと自分の腕を疑われる気がします。
ただ、相談先を選べば、この問題は消えます。 技術のことはディーラーや講習、税金のことは税務署。 相手は仕事として答えるだけなので、評価されることはありません。
「迷惑をかけたくない」
公的な窓口は、相談を受けるためにあります。 使わないほうが、むしろもったいないと考えてください。
知り合いに聞く場合も、こちらが恐縮しすぎると相手も答えにくくなります。 「5分だけ」と時間を区切って聞くと、お互いに楽になります。
「お金がかかる」
ここは、はっきり計算したほうがいいところです。
数千円の相談料を惜しんで、数万円分の時間を使っていないか。 ひとりでやっていると、自分の時間が無料に見えてしまいます。
無料で相談できる窓口も多くあります。 税務署、消費生活センター、保健所は、いずれも費用がかかりません。 まず無料の窓口から始めて、足りなければ有料へという順番で十分です。
相談する前に、整理しておく3つ
相談は、準備で結果が変わります。この3つを紙に書いてから行ってください。
何が起きたか
日付と事実だけ。「たぶん」「〜だと思う」は分けて書きます。
何を決めたいか
相談のゴール。「どうしたらいいですか」ではなく「AとBのどちらか」の形に。
自分はどうしたいか
いちばん抜けるところです。希望がないと、相手も答えようがありません。
特に3つめが大事です。「どうしたらいいですか」と丸投げすると、 一般論しか返ってきません。 「本当はこうしたいのですが、可能でしょうか」と聞けば、具体的な答えが返ってきます。
これは第1話でお伝えした、ご家族への相談のしかたと同じ構造です。 先に自分の案を持っていくと、話が具体的になります。
同業に相談するときの、ひとつだけの注意
同業のつながりは心強いものですが、ひとつだけ気をつけたいことがあります。
聞いていいこと
- 技術・材料・道具のこと
- 手順や段取りの工夫
- 「こういうときどうしてる?」という一般的な相談
気をつけたいこと
- お客様が特定できる話し方をしない
- ほかのサロンの価格をそのまま真似しない
- 愚痴だけの場に長くいない
とくに1つめです。お客様の話は、状況だけを切り出して、人物が分からない形にしてください。 自宅サロンは地域が近いことが多く、思っている以上に特定されやすいものです。
お金を払って頼むかどうかの、決め方
相談だけでなく、作業そのものを人に頼むかどうかで迷う場面もあります。 経理、ホームページ、写真の加工、予約システムの設定。
判断のしかたは、ひとつだけです。
自分の時間には、ちゃんと値段がついています。ひとりでやっていると、そこが見えなくなります。
たとえば、ホームページの直し方を調べるのに10時間かかったとします。 その10時間で施術が2〜3件できるなら、失っているのは10時間ではなく、2〜3件分の売上です。 外注費がそれを下回るなら、頼んだほうが手元に残ります。
人に頼みやすいこと
- やり方を覚えても、次に使うのが半年後のこと
- 調べる時間が読めないこと
- 間違えると、あとで直すのが大変なこと
自分でやったほうがいいこと
- 毎週くり返すこと(覚えたぶんだけ楽になります)
- お客様との、直接のやりとり
- お店の方針を決めること
ひとつ気をつけたいのは、全部を任せないことです。 お店の方針だけは、人に決めてもらわないでください。 そこを手放すと、自分の店ではなくなっていきます。
頼むのは作業であって、判断ではありません。 決めるのは自分。手は借りていい。この線が引けていれば、迷わなくなります。
ひとりで抱え込んでいるときの、5つのサイン
自分では気づきにくいので、目安を挙げておきます。
- 同じことを、3日以上考え続けている
- お客様からの連絡を見るのが、こわい
- 予約が入ると、うれしいより先に身構える
- 眠れない日が続いている
- やめたほうがいいのかも、と何度も思う
ひとつでも当てはまるなら、内容が何であれ、まず人に話してください。 解決策より先に、話す相手が要ります。
ひとりサロンの、よくある質問
トラブル編で、決めてきたこと
最後に、ここまでの5つを並べておきます。 どれも「性格を直す」話ではなく、性格に合う仕組みを選ぶ話でした。
| 場面 | 選んだこと |
|---|---|
| 連絡が来た直後 | その場で答えない。期限を切って持ち帰る |
| お直しを求められた | 口で言わず、メニュー表に書いておく |
| 爪に異変があった | 損得で決めず、受診をお勧めする |
| ご近所から声をかけられた | 隠さず、その場で全部話す |
| 困って動けなくなった | 抱えずに、決まった相談先へ持っていく |
共通しているのは、その場で言わなくて済むようにしてあることです。 言いにくいことを言う練習をするより、言う場面そのものを減らすほうが、はるかに現実的でした。
ひとりでやっていると、自分の性格が弱点に見えてきます。 でも、直さなくていいのです。合う形を選べば、それで店は回ります。
ひとりで、やらなくていい。
お直しの線引き、爪の異変、ご近所とのこと。
どれも、ひとりで抱えなくていいことばかりでした。
次はリピート編。来てくださった方に、また来ていただくための話です。
抱えなくていいことは、任せてください。
ホームページも、Googleマップも、書いておけば言わずに済む仕組みも。 ネイルサロン専門で、ひとりでやっていく土台づくりをお手伝いします。
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※記載の相談先は一般的な例です。取り扱う内容や受付の方法は窓口により異なりますので、
詳細は各機関にご確認ください。税務・法務・衛生に関する最終的な判断は、
それぞれの専門家や所管の機関にご相談ください。
※爪や皮膚に異常が見られる場合は医療機関を、身の危険を感じる場合は警察にご相談ください。
