インターホンが鳴った。お客様ではなく、お隣の方でした—— 自宅サロンでいちばん多く、そしていちばん深刻なのがご近所とのトラブルです。 お客様との行き違いは謝れば済みますが、こちらはお店を続けられるかどうかに直結します。 この記事では、起きたときの初動と、そもそも起こさないための準備をまとめます。
- 近隣トラブルは、損得で判断してはいけない唯一の場面
- いちばん多いのは駐車。予約時の案内文で、ほとんど防げます
- 起きたら、その日のうちに顔を出して詫びる
- お客様がどこに停めているか、正確には把握していない
- 予約のときに、駐車場のことを何も伝えていない
- ご近所に、自宅で仕事をしていることを言っていない
- クレームを受けたら、まず言い訳を考えてしまいそう
- アセトンのにおいが外に出ているか、考えたことがない
ひとつでも当てはまれば、いまのうちに手を打てます。 起きてから直すより、起きる前に決めておくほうが、はるかに簡単です。
自宅サロンの近隣トラブルは、お客様対応とは別ものです
これまでの回では、損失額と信念の二軸で判断する方法をお伝えしてきました。 ですが、この回だけは違います。近隣トラブルに、二軸は使えません。
理由は単純で、損失額が計算できないからです。
お客様とのトラブル
- 失うのは、そのお客様1人と施術料
- 金額が見えるので、判断できる
- 次のお客様がいらっしゃれば、取り戻せる
ご近所とのトラブル
- 失うのは、営業を続けられるかどうか
- 金額に換算できない
- 関係がこじれると、取り戻すのは非常に難しい
ご近所の方は、お客様ではありません。これから何年も隣にいらっしゃる方です。 だからこの場面では、正しさを通す選択肢を最初から外して構いません。
こちらに落ち度がないと思える場合でも、まず「ご迷惑をおかけしました」から入ります。 ここで交渉を始めると、話は必ず長引きます。
いちばん多いのは、駐車場・路上駐車のトラブル
なぜ自宅サロンで起きやすいのか
お客様に悪気はありません。どこに停めればいいか分からないだけです。
店舗なら看板や駐車場の表示がありますが、住宅街の一軒家にはそれがありません。 結果として、こういうことが起きます。
お隣の敷地に停める
「空いているから大丈夫だろう」と判断されてしまいます。いちばん深刻な形です。
路上に停める
通行の妨げになり、通報につながることもあります。
私道の入口をふさぐ
他のお宅の車が出られなくなり、当日中に苦情が来ます。
予約時に送る、駐車場の案内文の例
対策は、予約が確定したタイミングで案内を送るだけです。 当日ではなく、予約確定時。到着してから探させないためです。
恐れ入りますが、当サロンには駐車スペースがございません。
近隣のコインパーキング(◯◯パーキング/徒歩2分)をご利用ください。
周辺の道路・私道・近隣のお宅の敷地には停められませんのでご了承ください。
地図:(URL)
ポイントは3つです。
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| 駐車場がないと明記 | 「あるかも」と期待させない |
| 停める場所を指定する | 探させない。迷わせない |
| 停めてはいけない場所を書く | ここが最重要。書かないと伝わりません |
「常識で分かるはず」と思わないでください。 書いていないことは、伝えていないのと同じです。
ご近所から苦情を受けたときの初動と、謝り方
その場で言ってはいけないこと
1つめは疑っています。2つめは反論です。 3つめは一見よさそうですが、他人事に聞こえます。 「伝えておきます」ではなく、「わたしが決まりを作ります」でなければ届きません。
そのまま使える、謝罪と再発防止の伝え方
今後は、ご予約のときに駐車場所をご案内するようにいたします。 またお気づきのことがありましたら、遠慮なくおっしゃってください。
この言い方には4つ入っています。 詫びる/隠さない/すぐ動く/再発を防ぐ約束をする。
特に大事なのが「隠さない」です。 自宅で仕事をしていることを言い渋ると、相手は「後ろめたいことがある」と受け取ります。 むしろこの機会に、きちんとお伝えしてしまったほうが後が楽になります。
駐車以外の3つ|音・におい・人の出入り
駐車の次に多いのが、この3つです。いずれも気づかないうちに起きています。
起きていること
- 音——集塵機、玄関の開閉、話し声、笑い声
- におい——アセトン、溶剤。換気扇から外に出ます
- 人の出入り——日に何人も知らない人が出入りする不安
できること
- 夜間の営業をやめる、または時間の上限を決める
- 換気扇の向きを確認する。お隣の窓の側なら位置を変える
- 玄関先での長話をしない。お見送りは室内で
- ご近所に、何をしているかを先に伝えておく
「人の出入り」への不安は、何をしているか分からないことから来ています。 ネイルサロンだと分かっていれば、不安の大半は消えます。
開業前にしておく、ご近所への挨拶と伝え方
いちばん効くのが、これです。始める前に、ひと言お伝えしておく。
ここでも上限を数字で伝えるのが効きます。 「1日2名まで」「平日の日中だけ」と言われれば、際限なく人が来るわけではないと分かります。 第1話でお伝えした「先に決めて、先に言う」が、ここでも同じように働きます。
言っておくと、味方になってくださることもあります
知らせておくと、ご近所の方が先に教えてくださるようになります。 「さっき車が停まってたよ」と。苦情が来る前に手を打てるということです。
黙っていると、最初の接触が必ず苦情になります。この差は、思っているより大きいものです。
そもそも起きにくくする、3つの上限
ここまでは、起きたときと、伝えるときの話でした。 最後に、設計そのものでトラブルを減らす方法を書いておきます。
ご近所が不安になるのは、「どこまで大きくなるのか分からない」からです。 第1話でご家族に説明したときと、まったく同じ構造をしています。
1日の人数
1日2名までなど。出入りの回数が読めると、周囲の不安は大きく下がります。
営業する時間帯
平日の日中だけ、など。夜間と早朝を外すだけで、音の問題はほぼ消えます。
車で来られる人数
駐車の案内を送っていても、同時に2台重なると目立ちます。枠で調整できます。
この3つは、ご近所への挨拶のときにそのまま使えます。 数字で言えると、相手も安心して受け止められます。
お客様側にも、先に伝えておく
お客様にも、住宅街であることを最初にお伝えしておきます。 責める言い方ではなく、お願いの形で。
これを予約確定のメッセージに入れておくだけで、ほとんどの方は配慮してくださいます。 伝えていないことは、守りようがありません。
賃貸・マンションで自宅サロンを開くときの確認事項
戸建ての持ち家であれば、上記の配慮でおおむね足ります。 ですが賃貸物件や分譲マンションの場合は、別の確認が必要です。
確認せずに始めるリスク
- 「住居専用」で商業利用が認められていないことがある
- 管理規約で不特定多数の出入りが制限されていることがある
- 発覚した場合、契約に関わる問題になりうる
先にすること
- 賃貸契約書・管理規約を読む
- 不明な点は、管理会社や大家さんに確認する
- 判断に迷う場合は、専門家にご相談ください
この記事では、可否について具体的な判断は申し上げられません。 契約や規約の内容は物件ごとに異なりますので、必ずご自身でご確認ください。
ご近所トラブルに関するよくある質問
ご近所への、先回りシート
開業前のご挨拶の文例、予約時に送る駐車の案内文、苦情を受けたときの初動チェック。A4・1枚にまとめました。
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※賃貸契約・管理規約・用途地域などの可否について、本記事は判断を示すものではありません。
条件は物件ごとに異なりますので、契約書や管理規約をご確認のうえ、
管理会社・大家さん・専門家にご相談ください。
※駐車や通行に関する取り扱いは地域により異なります。
実際の対応は、お住まいの状況にあわせてご判断ください。
