施術は喜んでいただけた。帰りぎわに「また来ますね」とも言ってもらえた。 それなのに、二度目がない——。自宅サロンをはじめて半年ほど経つと、多くの方がここでつまずきます。 この記事では、来なくなる理由と、次に来ていただくための考え方をまとめます。
- 来なくなる理由は、不満よりも「忘れている」ほうが多い
- リピートは引き止めることではなく、次に来る理由を先に置いておくこと
- 最初の3回・90日を越えられるかが、いちばん大きな分かれ目
- 「また来ますね」と言われたのに、連絡がない
- 新規のお客様は来るのに、予約表がいつも埋まらない
- 常連さんが3人いれば安心なのに、その3人ができない
- 次回予約をすすめたいが、押し売りに思われそうで言えない
- 来なくなった理由を知りたいけれど、本人には聞けない
「また来ますね」は、社交辞令ではありません
まず、ここを誤解しないでいただきたいのです。 帰りぎわのあの一言は、たいていの場合本心です。 その瞬間、お客様は本当にまた来るつもりでいます。
ただ、そこには日付が入っていません。 「また」は、いつでもいい、ということです。いつでもいい予定は、 仕事や家族の予定に押されて、少しずつ後ろへずれていきます。 そして三週間、四週間と経つうちに、ジェルは取れ、爪は伸び、 「今から連絡するのは、間が空きすぎて気まずいかもしれない」という気持ちが生まれます。
つまり、あなたの技術に不満があったから来ない、というケースは思うより少ないのです。 多くは、来ない理由が積み重なっただけです。
来なくなる理由は、だいたい3つに分かれます
「なぜ来てくださらなかったのですか」と直接うかがえないのが、この問題のいちばん難しいところです。 ただ、来店の間隔が空く要因は、大きく次の3つに整理できます。
忘れている
不満はありません。ただ、日常に紛れて思い出す機会がなかった。もっとも多い理由です。
タイミングを逃した
行こうと思った日に予約が取れなかった。あるいは間が空きすぎて、連絡しづらくなった。
きっかけがない
次に何を頼めばいいか分からない。前回と同じでいいのか、迷っているうちに時間が過ぎた。
この3つに共通しているのは、どれも「あなたのせい」ではないということです。 そして同時に、どれも仕組みで減らせるということでもあります。
引き止めようとすると、かえって遠ざかります
リピートを増やそうとするとき、多くの方が最初に思いつくのは 「値段を下げる」「割引券を渡す」「熱心に次回をおすすめする」といった方法です。
ただ、これらはお客様が帰ろうとしている方向に、手を伸ばして引き止めるやり方です。 熱心にすればするほど、お客様の側には「断らなければ」という負担が生まれます。 そして人は、負担のある場所を避けるようになります。
引き止める(負担が増える)
- 会計時に「次はいつ来られますか」と迫る
- 期限つきの割引券を渡す
- 来ないお客様に個別に連絡する
- 値段を下げて、来やすくしようとする
先に置く(判断がラクになる)
- 施術中に、次にきれいに保てる時期を伝えておく
- 会計時は「日付を出すだけ」にする
- 三〜四週間後に、全員へ同じ一声をかける
- 値段は変えず、次に来る理由のほうを用意する
右の列に共通しているのは、お客様に「断る」という作業をさせていないことです。 情報が先に置いてあるだけなので、受け取るか受け取らないかを、 お客様が自分のペースで決められます。
これが、このシーズンを通しての考え方になります。
「先に置く」場所は、3つあります
では具体的に、どこに何を置くのか。順番に並べると、次のようになります。
施術中に、次の時期を伝えておく
「爪の状態的に、次は三〜四週間後がきれいに保てます」と、専門家として目安をお伝えします。 会計時ではなく施術中に言うのがポイントです。この時点では、まだ予約の話ではないので、 お客様に断る必要が生まれません。
会計時は、日付を出すだけにする
「次のご予約はいかがですか」と聞くと、お客様は「はい/いいえ」を答えることになります。 そうではなく「◯月◯日の午後が空いています」と具体的な日を出すと、 考える対象が「行くかどうか」から「その日でいいかどうか」に変わります。
三〜四週間後に、全員へ同じ一声をかける
個別に追いかけると、追われている感じが出ます。来店サイクルに合わせて、 全員へ同じ内容をお送りするほうが、受け取る側の負担が軽くなります。 「前回から四週間が経ちました」という事実だけで十分です。
この3つの具体的なやり方は、第2話以降でひとつずつ扱います。 ここでは、3つとも「先に置く」という同じ発想でできていることだけ、 つかんでいただければ十分です。
いちばんの分かれ目は、最初の3回
お客様が固定客になるかどうかは、初回ではなく2回目から3回目にかけて決まると言われています。 美容業界では「3回・90日の壁」という言い方がされることもあります。
| 回数 | お客様の状態 | 置いておくもの |
|---|---|---|
| 1回目 | お店を「試している」段階。まだ比較対象のひとつ | 次の時期の目安。次に何ができるかの提案 |
| 2回目 | ここがいちばん抜けやすい。忘れられると戻らない | 具体的な日付。前回の記録にもとづく一言 |
| 3回目 | 「行きつけ」に変わりはじめる。ここを越えると定着しやすい | 好みの記録。次のデザインの相談 |
ネイルは三〜四週間ごとに通う業態ですから、3回目までは おおむね三か月ほどです。この三か月をどう設計するかが、リピートのほぼすべてと言っても 言いすぎではありません。
新しいお客様を探すより、先にここを整える
新規のお客様を集めるコストは、既存のお客様に続けていただくコストの 数倍かかると一般に言われています。にもかかわらず、 予約が埋まらないと、つい新規集客のほうへ手が伸びてしまう。
ただ、受け皿が整っていないまま新規を増やすと、 集めては抜けるという状態を、ずっと続けることになります。 順番としては、先にリピートの導線を整えてから、集客に力を入れるほうが、 結果的に早く落ち着きます。
「覚えていてくれた」が、いちばん効きます
仕組みの話をしてきましたが、最後にひとつだけ、 仕組みでは代えられないものについて触れておきます。
前回のデザイン、選んだ色、話した内容、爪の状態。 それを記録して、次にお会いしたときに「前回は◯◯でしたね」と自然に出せるかどうか。 これは、大きなサロンほど難しく、ひとりのサロンほどやりやすいことです。
お客様が「行きつけ」を決める理由は、技術や値段だけではありません。 自分のことを分かってくれている場所かどうかが、想像以上に効きます。 ノート1冊でかまいません。書いておくだけで、次に返せるものが増えます。
よくある質問
二度と来ない商売を、十年やってきました
わたしは本業で、リゾート地の結婚式に着ていただく衣装を貸す仕事を、 十年以上続けています。結婚式は、多くの方にとって一生に一度です。 つまり、同じお客様がもう一度いらっしゃることは、ほとんどありません。
はじめの数年は、それを当たり前だと思っていました。 ところがあるとき、お問い合わせの中に「友人から聞きました」と書かれているものが、 少しずつ増えていることに気づきました。 リピートのない商売でも、次の方はいらっしゃる。ただし、来る道筋が違っていたのです。
それに気づいてから、最後のやりとりに手をかけるようになりました。 もう来ない方に、丁寧にお返しする。効率だけを考えれば、削ってよい部分です。 ただ、わたしの経験では、いちばん最後の印象が、いちばん人に話されやすいように思います。
ネイルは、三〜四週間ごとに通っていただける商売です。 わたしから見ると、それはとても恵まれた条件に見えます。
みなさまのお店では、どうでしょうか。
次に来る理由を、先に置いておく。
「先に置く」場所を、ひとつ増やす
メニュー・料金・次回の目安をまとめて置いておける場所があると、 同じ説明を毎回しなくて済みます。ネイルサロン専用のホームページを、 5つのデザインからお選びいただけます。
次の日を、決めておきました
「次のご予約はいかがですか」が、どうしても言えない。売り込みに思われるのが怖いから。 でも、言う場所を変えたら、言わなくて済むようになりました。
第2話を読む
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※記載の内容は一般的な情報をもとにまとめたものです。リピート率・来店間隔の目安は
地域・客層・単価・営業形態によって異なります。数値はいずれも参考であり、
特定の成果をお約束するものではありません。
