ママ友から「わたしもお願いしていい? いくらくらい?」 値段は決めてあるのに、口が動かない。半額と言うべきか、いっそタダにするべきか。 この記事は、その場で値段が揺れてしまう人のためのものです。
- 自宅サロンが店舗より安いこと自体は、相場どおりで問題ない
- 問題は安さではなく、相手によって値段が変わること
- 言えるようになるのではなく、言わなくて済む料金体系を選ぶ
- 「いくら?」と聞かれた瞬間、一拍おいてしまう
- 相手の顔を見てから、金額を決めている気がする
- 「友達だから」と言われると、正規の料金が言い出せない
- 言ったあとで「高いと思われたかな」と考えてしまう
- お礼だけで受けたことが、一度ならずある
- 他のお客様に知られたら気まずい価格が、いくつかある
- そもそも料金表を、紙にもデータにもしていない
値段だけが、どうしても言えない
ふしぎなことに、技術の説明はできます。所要時間も答えられます。 もちの目安も、ケアの方法も、迷わず言える。 値段だけが、言えません。
理由はおそらく、ここにあります。
高く言えば図々しく、安く言えば自分を安売りしている気がしてしまう。
けれど、料金は自分の値札ではありません。 材料と、時間と、技術に対して払われるものです。 自分の価値を評価してもらう場面ではなく、 かかるものを正しくお伝えする場面にすぎない——そう捉え直すだけで、少し楽になります。
開業直後ほど、この場面が来ます
しかも、この問題はいちばん経験の浅い時期に集中して起きます。
開業したばかりの頃、最初のお客様になってくださるのは、 たいてい知り合いです。友人、ママ友、親戚、前の職場の同僚。 まだ自信もない時期に、いちばん値段を言いにくい相手が並びます。
ここで一度ゆるめた価格が、そのまま「その人の価格」として固定されます。 そして数年後、いちばん長いお付き合いのお客様が、いちばん安いという ねじれた状態ができあがります。
友達価格が、こわす3つのもの
「安くしてあげる」は、その場では優しさに見えます。 けれど、あとから効いてきます。
他のお客様への説明
同じ施術で違う金額が存在すると、正規の料金に理由がなくなります。知られたときに説明できません。
友達との関係
安くしてもらった側は、次から気を遣います。頼みにくくなって、来なくなることすらあります。
紹介の流れ
「友達価格で」と紹介されると、その先も同じ扱いを期待されます。広がるほど戻せなくなります。
「安くしてあげた」は、貸しになります
2つめについて、もう少しだけ。
値引きを受けた側は、うれしいと同時に借りができたと感じます。 すると次は「また安くしてもらうのは悪いから」と遠慮が生まれ、 やがて予約そのものが減っていく。
安くすることは、優しさのつもりで関係を対等でなくしてしまう行為でもあります。 正規の料金でお迎えするほうが、じつは長く続きます。
ただし、「安い」こと自体は悪ではありません
ここは分けて考えてください。
一般的に、自宅サロンと路面店舗では平均で数千円ほどの価格差が出る傾向があると 言われています。地域による差も大きく、都市部と郊外・自宅サロンでは 同じメニューでも3〜4割ほど開きが出ることもあります。
これは自宅サロンの固定費が低いためで、相場としては自然なことです。 店舗より安く設定すること自体は、まったく問題ありません。
| こういう安さ | どうか |
|---|---|
| 自宅なので、店舗より抑えている | 問題なし。固定費が違うので当然の差 |
| 地域の相場に合わせている | 問題なし。客層に合っているかで判断 |
| この人にだけ、安くしている | これが問題。説明できない差になる |
| 続けられないほど安い | これも問題。安すぎる設定は経営を圧迫する |
つまり争点は「高いか安いか」ではありません。 相手によって変わるかどうかと、続けられるかどうか。この2つだけです。
料金体系は、3タイプあります
オフもケアもアートも含めて、メニューごとに1つの金額。 その場で計算する余地がありません。 お客様も総額が読めるので安心されます。
ベース料金に、アート・ストーン・長さ出しなどを1本いくらで足していく方式。 かかった手間がそのまま反映されるので、不公平が出にくいのが利点です。
基本は定額にして、特別なものだけ別料金にする中間型。 多くのサロンが自然とこの形に落ち着きます。
どれが正解ということはありません。 ただし「断れない」という自覚がある方には、1がいちばん効きます。
みさきが選んだのは、定額制でした
理由は単純です。その場で計算する余地がないから。
パーツごとの加算だと、「じゃあストーンは無しにして…」と、 相手の前で金額を下げていくことができてしまいます。 定額なら、「うちは定額なので」で終わります。
性格は直せません。だから、性格に合う仕組みを選びます。
紙にすると、さらに言わなくて済みます
料金表は、口で伝えるものではなく見ていただくものにします。
1枚の紙、あるいは画像1枚。それを差し出して 「こちらになります」と言うだけなら、金額を口に出す必要すらありません。 紙が代わりに言ってくれます。
置き場所は、第2話と同じ考え方です。プロフィール、予約ページ、 ハイライトに常設。予約が入る前に見られている状態を作れば、 そもそも当日に聞かれません。
値引き以外の、3つの返し方
とはいえ、何も返せないのは心苦しいものです。 金額を下げずに、価値を足す方法があります。
写真の掲載に協力してもらう
正規料金で受け、SNS掲載の許可をいただく。作品が増え、相手も特別感があります。
初回だけサービスを足す
ハンドケアを1回だけ付けるなど。値引きではなく、期間限定の追加にするのが要点です。
紹介の特典で返す
紹介してくださった方に次回の特典を。今ではなく次回に返すと、再来店にもつながります。
どれも共通しているのは、「今回の金額」を下げていないことです。 料金表は動かさず、別のかたちで気持ちを返しています。
言い方を、決めておく
最後の一文が効きます。「あなただけ高い」のではなく「みんな同じ」だと伝わるからです。 値引きを断っているのではなく、公平であることを説明している形になります。
「いくらでもいいよ」と言われたら
相手を立てながら、理由を「自分が続けるため」に置いています。 お金がほしいからではなく、続けるために必要だから——この言い方なら、 角が立ちにくく、相手も納得しやすくなります。
揺れる料金表
- 頭の中にしかない
- 「だいたい◯円くらい」と幅がある
- その場で足したり引いたりできる
- 相手によって出す・出さないを変えている
揺れない料金表
- 紙か画像になっている
- メニューごとに金額がひとつ
- 予約前に誰でも見られる場所にある
- 全員に同じものを出している
結果として、関係は壊れませんでした。 むしろ「ちゃんとしてるね」と言われたそうです。 料金が明確なほうが、頼む側も気を遣わずに済むからかもしれません。
よくある質問
料金体系 3タイプ 比較シート
定額制・パーツ加算・定額+オプションを並べて比較。向き不向きと、 ご自身の料金表を書き込む欄をつけています。
その画像、そのままは無理なんです
お客様がスマホで見せてくださったデザイン。パーツもない、色もない、時間も足りない。 それでも「できます」と言ってしまいました。
第5話を読む
※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。
登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※価格差に関する記述は一般的な傾向であり、地域・客層・仕入先によって大きく異なります。
具体的な金額の設定は、ご自身の環境をふまえてご判断ください。
※第4話は物語のみの回のため、解説記事はありません。
※画像はAIで作成したイメージです。
