ネイルの友達価格、どう断る?|値引きせずに関係を壊さない料金体系の決め方

第3話 友達に、いくらって言えばいいの|ひとりネイルサロン みさきの物語
運営編 第3話

ママ友から「わたしもお願いしていい? いくらくらい?」 値段は決めてあるのに、口が動かない。半額と言うべきか、いっそタダにするべきか。 この記事は、その場で値段が揺れてしまう人のためのものです。

この記事の要点
  1. 自宅サロンが店舗より安いこと自体は、相場どおりで問題ない
  2. 問題は安さではなく、相手によって値段が変わること
  3. 言えるようになるのではなく、言わなくて済む料金体系を選ぶ
まず、思い当たるものはありますか
ひとつでも当てはまれば、この記事はお役に立てると思います。
  • 「いくら?」と聞かれた瞬間、一拍おいてしまう
  • 相手の顔を見てから、金額を決めている気がする
  • 「友達だから」と言われると、正規の料金が言い出せない
  • 言ったあとで「高いと思われたかな」と考えてしまう
  • お礼だけで受けたことが、一度ならずある
  • 他のお客様に知られたら気まずい価格が、いくつかある
  • そもそも料金表を、紙にもデータにもしていない

値段だけが、どうしても言えない

ふしぎなことに、技術の説明はできます。所要時間も答えられます。 もちの目安も、ケアの方法も、迷わず言える。 値段だけが、言えません。

理由はおそらく、ここにあります。

値段を伝えることが、自分に値札をつけることのように感じられるからです。
高く言えば図々しく、安く言えば自分を安売りしている気がしてしまう。

けれど、料金は自分の値札ではありません。 材料と、時間と、技術に対して払われるものです。 自分の価値を評価してもらう場面ではなく、 かかるものを正しくお伝えする場面にすぎない——そう捉え直すだけで、少し楽になります。

夜の作業台で頭を抱えるみさき
相手の顔が見えると、値段が揺れる。

開業直後ほど、この場面が来ます

しかも、この問題はいちばん経験の浅い時期に集中して起きます。

開業したばかりの頃、最初のお客様になってくださるのは、 たいてい知り合いです。友人、ママ友、親戚、前の職場の同僚。 まだ自信もない時期に、いちばん値段を言いにくい相手が並びます。

ここで一度ゆるめた価格が、そのまま「その人の価格」として固定されます。 そして数年後、いちばん長いお付き合いのお客様が、いちばん安いという ねじれた状態ができあがります。

友達価格が、こわす3つのもの

「安くしてあげる」は、その場では優しさに見えます。 けれど、あとから効いてきます。

こわれる 1

他のお客様への説明

同じ施術で違う金額が存在すると、正規の料金に理由がなくなります。知られたときに説明できません。

こわれる 2

友達との関係

安くしてもらった側は、次から気を遣います。頼みにくくなって、来なくなることすらあります。

こわれる 3

紹介の流れ

「友達価格で」と紹介されると、その先も同じ扱いを期待されます。広がるほど戻せなくなります。

「安くしてあげた」は、貸しになります

2つめについて、もう少しだけ。

値引きを受けた側は、うれしいと同時に借りができたと感じます。 すると次は「また安くしてもらうのは悪いから」と遠慮が生まれ、 やがて予約そのものが減っていく。

安くすることは、優しさのつもりで関係を対等でなくしてしまう行為でもあります。 正規の料金でお迎えするほうが、じつは長く続きます。

ただし、「安い」こと自体は悪ではありません

ここは分けて考えてください。

一般的に、自宅サロンと路面店舗では平均で数千円ほどの価格差が出る傾向があると 言われています。地域による差も大きく、都市部と郊外・自宅サロンでは 同じメニューでも3〜4割ほど開きが出ることもあります。

これは自宅サロンの固定費が低いためで、相場としては自然なことです。 店舗より安く設定すること自体は、まったく問題ありません。

こういう安さ どうか
自宅なので、店舗より抑えている 問題なし。固定費が違うので当然の差
地域の相場に合わせている 問題なし。客層に合っているかで判断
この人にだけ、安くしている これが問題。説明できない差になる
続けられないほど安い これも問題。安すぎる設定は経営を圧迫する

つまり争点は「高いか安いか」ではありません。 相手によって変わるかどうかと、続けられるかどうか。この2つだけです。

腕を組んで言い切る涼子先輩
「揺れないのを選べばいい。料金表は3タイプある」 強い意志を持つのではなく、揺れようのない仕組みを選ぶ、という考え方です。

料金体系は、3タイプあります

1
定額制(込みで固定)

オフもケアもアートも含めて、メニューごとに1つの金額。 その場で計算する余地がありません。 お客様も総額が読めるので安心されます。

向いている人:値段を言うのが苦手/メニュー数を絞りたい
気をつけること:手のかかるデザインで赤字にならないよう、上限を決めておく

2
パーツごとに加算

ベース料金に、アート・ストーン・長さ出しなどを1本いくらで足していく方式。 かかった手間がそのまま反映されるので、不公平が出にくいのが利点です。

向いている人:デザインの幅が広い/凝ったオーダーが多い
気をつけること:その場で計算できてしまうので、値引きの余地が残る

3
定額+オプション

基本は定額にして、特別なものだけ別料金にする中間型。 多くのサロンが自然とこの形に落ち着きます。

向いている人:定額にしたいが、例外的なオーダーもある
気をつけること:オプションを増やしすぎると2に近づく

どれが正解ということはありません。 ただし「断れない」という自覚がある方には、1がいちばん効きます。

みさきが選んだのは、定額制でした

理由は単純です。その場で計算する余地がないから。

パーツごとの加算だと、「じゃあストーンは無しにして…」と、 相手の前で金額を下げていくことができてしまいます。 定額なら、「うちは定額なので」で終わります。

本気モードで料金表を作るみさき
「うちは定額なので」——それだけで済むようにした。
強い意志で言い切るのではなく、言い切らなくて済む形を選ぶ。
性格は直せません。だから、性格に合う仕組みを選びます。

紙にすると、さらに言わなくて済みます

料金表は、口で伝えるものではなく見ていただくものにします。

1枚の紙、あるいは画像1枚。それを差し出して 「こちらになります」と言うだけなら、金額を口に出す必要すらありません。 紙が代わりに言ってくれます。

置き場所は、第2話と同じ考え方です。プロフィール、予約ページ、 ハイライトに常設。予約が入る前に見られている状態を作れば、 そもそも当日に聞かれません。

値引き以外の、3つの返し方

とはいえ、何も返せないのは心苦しいものです。 金額を下げずに、価値を足す方法があります。

返し方 1

写真の掲載に協力してもらう

正規料金で受け、SNS掲載の許可をいただく。作品が増え、相手も特別感があります。

返し方 2

初回だけサービスを足す

ハンドケアを1回だけ付けるなど。値引きではなく、期間限定の追加にするのが要点です。

返し方 3

紹介の特典で返す

紹介してくださった方に次回の特典を。今ではなく次回に返すと、再来店にもつながります。

どれも共通しているのは、「今回の金額」を下げていないことです。 料金表は動かさず、別のかたちで気持ちを返しています。

言い方を、決めておく

えーっと、友達だし……いくらでもいいよ、ほんとに。
こちらが料金表です。ワンカラーだとこちら、 アートを入れるとこちらになります。材料も時間も同じなので、 どなたも同じ金額でお願いしています。

最後の一文が効きます。「あなただけ高い」のではなく「みんな同じ」だと伝わるからです。 値引きを断っているのではなく、公平であることを説明している形になります。

「いくらでもいいよ」と言われたら

じゃあ、気持ちだけで大丈夫だよ。
ありがとう。でも決めておかないと、わたしが続けられなくなっちゃうから。 料金表どおりでお願いします。

相手を立てながら、理由を「自分が続けるため」に置いています。 お金がほしいからではなく、続けるために必要だから——この言い方なら、 角が立ちにくく、相手も納得しやすくなります。

揺れる料金表

  • 頭の中にしかない
  • 「だいたい◯円くらい」と幅がある
  • その場で足したり引いたりできる
  • 相手によって出す・出さないを変えている

揺れない料金表

  • 紙か画像になっている
  • メニューごとに金額がひとつ
  • 予約前に誰でも見られる場所にある
  • 全員に同じものを出している
電話を終えてほっとするみさき
断る勇気じゃなくて、断らなくていい形を選んだ。

結果として、関係は壊れませんでした。 むしろ「ちゃんとしてるね」と言われたそうです。 料金が明確なほうが、頼む側も気を遣わずに済むからかもしれません。

よくある質問

すでに友達価格で受けてしまっています。今から戻せますか。
戻せます。ただし、いきなり次回から正規料金にすると驚かせてしまいます。 「◯月から料金表を統一します」と先にお知らせするのが穏当です。 理由は「続けていくために」で十分です。詳しい進め方は、 のちのシーズンであらためて扱います。
開業したばかりで技術に自信がなく、正規料金をもらうのが怖いです。
その気持ちは自然ですが、料金を下げるのではなく メニューの範囲を絞るほうをおすすめします。 「今できることだけを、正規の金額で」のほうが、 「なんでもやります、安くします」より続けやすく、信頼も積み上がります。
家族から「友達からお金を取るの?」と言われました。
材料費がかかっていること、1人あたり数時間を使っていることを 具体的に伝えてみてください。趣味ではなく仕事だと共有できていないだけ、 という場合がほとんどです。料金表を家族にも見せておくと、話が早くなります。
定額制にすると、凝ったデザインのときに赤字になりませんか。
その懸念はあります。だからこそ定額に含める範囲を決めておくことが必要です。 「ここまでは定額、これ以上は別メニュー」という線を先に引いておけば防げます。 その線の引き方は、第5話であらためて扱います。
料金表を作ったのに、まだ言うのが怖いです。
言わなくて構いません。差し出すだけで伝わります。 「こちらです」と紙を見せる、あるいは事前にリンクをお送りしておく。 金額を口に出す場面そのものを減らすのが、この回の答えです。
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料金体系 3タイプ 比較シート

定額制・パーツ加算・定額+オプションを並べて比較。向き不向きと、 ご自身の料金表を書き込む欄をつけています。

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第5話 その画像、そのままは無理なんです
NEXT — EPISODE 05

その画像、そのままは無理なんです

お客様がスマホで見せてくださったデザイン。パーツもない、色もない、時間も足りない。 それでも「できます」と言ってしまいました。

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※この記事は物語シリーズ「ひとりネイルサロン|みさきの物語」の解説記事です。 登場人物はすべてフィクションであり、実在しません。提供:WebエンジンPro(株式会社MASA)
※価格差に関する記述は一般的な傾向であり、地域・客層・仕入先によって大きく異なります。 具体的な金額の設定は、ご自身の環境をふまえてご判断ください。
※第4話は物語のみの回のため、解説記事はありません。
※画像はAIで作成したイメージです。

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